テクノロジー業界の最低CEOランキング

by 町田 龍馬 on 2011年9月13日

近年、米YahooのCarol Bartzが突然解任されたのに始まり、米GrouponのAndrew MasonのIPO(新規株式公開)延期事件まで、多くのCEOたちは、高額な給料の割に、責任者としての仕事をまったくこなしていないように見える。テクノロジー業界のワーストCEOはいったい誰なのか、ReadWriteWebがランキングを発表したので、紹介しよう。

第6位:Yahoo:Carol Bartz

先日、Carol Bartzが、Yahooからあっさりと解雇を告げられたことで、彼女が今回のランキングのワーストワンではないかと思われた人もいるだろう。確かに、BartzはYahooの再建に失敗した。だが、この件に関しては、Yahooの他の重役たちも同罪だという意見が強い。実際にBartzは、「Yahooにしてやられた」と主張している。

Bartzが今回のランキングに入った理由は、「思い切りのいいCEOとしてYahooを改革する」という約束を果たせなかったことにある。Bartzの在任中、Yahooはその長所を強化することに失敗し、魅力的なアイデアを何一つとして生み出せなかった。もし彼女が、テクノロジー・メディア「TechCrunch」のMichael Arrington との対談で豪語した通り、決断力や指導力を発揮していたなら、Yahooは今よりもずいぶんと健全な状態にあったはずだ。

現在、Yahooのサービスは、少々使えるものとありきたりのものが入り乱れた状態にある。米Microsoftとの中途半端な提携やコスト削減では、企業の成長を維持することなど不可能だ。数年前にMicrosoftが提示した買収金額の何分の一かで身売りを余儀なくされる前に、誰かがYahooに再び命を吹き込むことを期待したい。

第5位:Microsoft:Steve Ballmer

ほんの数年前まで、Microsoftは無敵の存在であり、テクノロジー業界でのそのプレゼンスは、永久に不動のように見えた。ところが、2011年を迎え、Microsoftの基盤が不安定になったように思える。CEOのSteve Ballmerの“おかげ”とでもいうべきだろう。

Ballmerといえば、悪名高き「Windows Vista」時代の責任者で、Yahooの買収にも失敗した。さらに今年、同氏は、85億ドルという非常識な金額で、米Skypeの買収に踏み切った。

Microsoftは、「Windows OS」と「Windows Office」シリーズ以外の販売低迷に大いに苦しんでいる。「Xbox」シリーズは好調といえるが、スマートフォンやタブレットPC市場では、大きく出遅れてしまった。Microsoftが掲げる「Windows8」へのビジョンも、今のところ平凡なものだ。第二のVistaに終わる可能性が高い。Microsoftには、確固とした経営ビジョンを持った舵取りが必要だ。

第4位:Nokia:Stephen Elop

携帯電話機のシェアで世界一を誇るフィンランドのNokia。そのCEOであるStephen Elopは、「モバイルOS『MeeGo』のエコシステムの確立に向けて迅速な対応ができなかった」と自ら述べている。そこで、Microsoftとの提携に飛び乗ったようだが、「Windows Phone 7」がいまひとつ盛り上がりに欠ける中、企業の運命をそこに託してしまうのは、正気の沙汰とは思えない。ましてや、開発者の間で話題の次世代モバイルOSの開発を、チップメーカーと共に進めているのだから、なおのことだ。

実質的にElopは、Nokiaの未来をMicrosoftにすべて預けてしまった。Microsoftのモバイル市場での業績をかんがみるに、このElopの戦略は、Nokiaにとって賢明な判断とはいえない。製品が売れるまで推し続けるというMicrosoftの長年の戦略は、今回は通用しないだろう。Elopは、Microsoftという沈みかけの船に、Nokiaを固く結び付けてしまった。

第3位:AOL:Tim Armstrong

現在、TechCrunchとその創設者Michael Arringtonを取り巻く一連のドラマは、崩壊寸前の米AOLの状態を的確に表している。AOLはTechCrunchだけでなく、ニュース・論説サイト「Huffington Post」も買収しており、Armstrongの判断は絶望的だと言われている。

株式投資に関する情報サイト「InvestorPlace」によると、AOLの株価は、今年に入ってから34%以上の下落をみせたという。先日、YahooのBartzがYahooから解雇され、多くの専門家が、次はArmstrongの番だとみている。AOLの役員たちは、Armstrongの退陣を本気で検討するべきだ。AOLが泥沼から復活するために必要なことは、コンテンツ事業の強化ではない。

第2位:Groupon:Andrew Mason

クーポン共同購入サイトを運営する米Grouponは、米Googleからの60億ドルという買収提案を一蹴した。GrouponのCEOであるAndrew Masonは、より大きな獲物に目をつけていた。つまり、IPOで大儲けを狙っていたわけだ。しかし、そのIPO申請の際に、異例の財務評価指数を採用し、マーケティング経費を営業経費から除外してしまった。このGrouponの「調査済み連結部門営業利益」に対して、米国証券取引委員会(SEC)は異議を唱えた。

きわめつけに、沈黙期間中(IPO申請後、企業の見通しに関する情報公開を制限しなくてはならない期間)に起きた、社内メモのメディアへの流出。Grouponは、予定していたIPOロードショー(株式公開前に投資家に行う会社説明会)の中止を発表し、株式公開自体も先送りにするようだ。次のIPOのチャンスは、ずいぶんと先になるだろう。

一方で、米Living SocialやGoogleなどの競争相手たちは、今にもGrouponに追いつきそうな勢いだ。やはり、Masonは60億ドルで手を打つべきだったのだ。

第1位:HP:Leo Apotheker

ワーストCEOたちのトップに“輝いた”のは、米Hewlett-Packard(HP)のLeo Apothekerだ。彼がHPのCEOを務めた短い期間が、どれほど悲惨なものだったのか、その“ハイライト”をまとめてみよう。

まず初めに、Apothekerは、法外な金額でのAutonomyの買収を断行し、株主の信用を揺さぶった。次に、HPの大改革を画策し、タブレットPC「Touch Pad」の生産中止を決定した。おまけに、HPはTouch Pad生産中止のニュースを、技術カンファレンス「LinuxCon」にて、同社がwebOS(Touch Padに搭載されたOS)に関するスピーチを行ったのと同日に発表している。

Apothekerが、発売からわずか2カ月もたたないうちに、webOSとTouch Padから撤退するという考えに至ったのも、理解できなくはない。ただ、もう少しTouch Padに戦うチャンスを与えても良かったのではないかと思う。

時を同じくして、HPはパソコン事業からの撤退を匂わせた。収益率の悪い市場から手を引くことは、間違ったことではない。米IBMが、そのお手本を見せている。事業の買い手を見つけ出し、合理的に撤退する。しかし、それとは違って、HPは買い手を見つけずに撤退しようとしているようだ。ここから、HPがいかに窮地に陥っているかがわかる。

窮地に陥るといえば、米Intelのプロセサ「Itanium」のサポート継続問題を巡る、米Oracleへの提訴の件がある。万が一、HPがこの裁判に勝利したとしても、いわゆる「負け組」であることに変わりはない。プラットフォームのサポートを継続するために、競争相手を提訴しなければならないような企業が、顧客の信用を得られるはずがない。

HPは、消えつつあるItaniumプラットフォームに力を注ぎ続けており、これが顧客や株主を遠ざける原因となっている。もしApothekerが、HPの現状を本気で改善したいと思うなら、何を最優先すべきかを見極める必要がある。

今回の記事で驚くべきことは、ランキングに挙げたCEOたちの無能な仕事ぶりに加え、彼らが受け取る報酬の額である。経営に失敗したCEOでさえ、数百万ドル(数億円)の年俸を稼いでおり、Bartzのように、解雇の際には巨額の退職金まで受け取る例もある。そんな資金があるならば、どんな優秀な人材でも確保することができるだろう。特に、AOL、Yahoo、Microsoft、HPなどは、すぐにでもそうすべきだ。

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町田 龍馬

著者プロフィール

25歳 起業家。米国向けにFacebook解析ツールを「ZenMetrics」を開発しながら、NetConcierge.jpのインバウンドマーケティングとFANCAM.comの日本進出を支援(http://t.co/DX58UjKS)。過去に倖田來未FANCAMと学研カレンダーアプリの企画/ディレクション、マイクロソフトのコンサル。モットーは「海外経験者や起業家精神を持った人を増やして日本を元気にする」

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